イントロダクション

これは世紀末の黄昏が生み出した、酔狂な遊びか、夢なのかーー
伝説の映画監督ダニエル・シュミットが日本で描き出した、夢幻の美。

未知の映画作家が次々と日本へ紹介され、ミニシアター・ブームが巻き起こった1980年代。蓮實重彦ら日本の映画人によって“発見”されたダニエル・シュミットは、退廃的な映像美で世界中に熱狂的なファンを生んだ。子供のような心を持ち、芸術への造詣が深くオペラ演出家としても知られたシュミットと、日本の文化人・映画人との深い親交から生まれた『書かれた顔』。
出演は、当代きっての歌舞伎役者で誰もが知る女形のスター坂東玉三郎、女優の杉村春子、日本舞踊家の武原はん、舞踏家の大野一雄、日本最高齢の芸者・蔦清小松朝じ。世紀末日本の黄昏に消えゆくレジェンドたちが見せた一瞬の煌めきが、映し出されていく。
美しく濃厚な幻想をスクリーンに現出させたシュミットの異色の傑作が、28年の時を経て4Kレストア版で再びスクリーンに蘇る。

坂東玉三郎という唯一無二の存在に魅せられた、
ダニエル・シュミットが見た“黄昏の夢、あるいは夢の黄昏”ーー

虚構と現実をないまぜにした幻想的な作品を得意とするシュミットは、女形という特異な存在を通して、ジェンダー、生と死、そしてフィクションとドキュメンタリーの境界線上に、虚構としての日本の伝統的女性像を浮かびあがらせる。
「鷺娘」「大蛇」「積恋雪関扉」を演じる玉三郎の美しい舞台映像はもちろんのこと、撮影後ほどなくしてこの世を去った杉村、武原の語りや、大野の荘厳な舞踏など、彼らの“最後の姿”は今や貴重な記録となった。
撮影はゴダール、ロメール、オリヴェイラらの作品も手掛けてきた名手レナート・ベルタ。盟友シュミットと生み出した夢幻の映像美は、今なお多くの作家に刺激を与え続けている。また本作に挿入されるフィクションパート「黄昏芸者情話(トワイライト・ゲイシャ・ストーリー)」では青山真治が助監督を務めた。

『書かれた顔 4Kレストア版』予告編

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